鼻猫亭

毎日のこととかぼんやり考えたことなど

映画ドラクエがとてもハイコンテクストだった話

映画ドラゴンクエスト、ユア・ストーリーを見たんだけど、ちょっと色々書きたくなったので書いておきます。積極的にネタバレします。

 

最初に私自身のことを言えば、ドラクエは1からほぼリアルタイムでプレイした世代で、ナンバリングタイトルはオンラインの10以外は全てエンディングまでプレイ済。好きなシリーズは2と4。5はリメイクも含めると5回くらいは遊んでると思います。

ユア・ストーリーはもともと見にいくつもりもなかったんだけど、たまたま「何やらとんでもない展開が控えてるらしい」というツイートを見かけたのとで発作的に初日のレイトショーに滑り込みました。なので、正直まったく期待してなかったんだけど、結論から言えば見に行って大正解でした。

徹頭徹尾ツッコミどころしかない展開にラストの痺れるようなどんでん返し。映画でこんな気分になるなんて滅多にあるもんじゃないし、怪異と珍奇を愛する皆さんに心からおススメです。

 

まず、冒頭はファミコン風のフォントでバックストーリーが語られるところから始まります。

このファミコン風フォントは男性ボイスで読み上げられるんだけど、まずここから「ん???」となるわけです。

 

…ボイス付きで読み上げられるだと?

 

例のフォントは「プルプルプル…」って例の音と一緒に表示されるのがポートピア連続殺人事件からの伝統じゃないですか?なんなら最新ハードで発売されたドラクエ11だってボイスつかなかったじゃないですか?例のフォントが「プルプルプル…」って音と一体となるものとして心に染み付いてる身としては「渋いボイスで語られる」こと自体がパラダイムシフトな訳です。

そんなことからすると、冒頭から「ミルドラース」ってラスボスの名前がしれっとバラされてるのなんて些細な問題ですね。

 

そんなことをぼんやり考えながら次のシーンに映ると今度はストーリーのイントロ部分がオリジナルのSFCドラクエ5ふうの画面を使って語られます。

 

主人公の誕生、母親を襲う不穏な影、パパスとの旅立ち、船の上でのフローラとの出会い……

 

……それ確かリメイク版で追加されたやつで、オリジナルにそんなシーンなかった気がするけどまあいいや。

 

そして、ダイジェストで語られるサンタローズでの新生活、ビアンカとの冒険、おやぶんゴーストとの戦い、オーブの入手……

 

……どこまでダイジェストでやればいいのか。

 

結局、ベビーパンサーを拾ってゲレゲレと名付けたところでようやく本編(つまり3DCGアニメのパート)に突入するんですが、幼少期のビアンカも出てこないまま、即ラインハットに行って即ヘンリーがさらわれて即洞窟の入り口でゲマと戦って即ぬわー。

 

始まって5分で即ぬわー

 

始まって5分で即ぬわー

 

もうこれだけで充分面白すぎる訳ですよ。面白すぎるから2回言った。

 

その後も物語はハイスピードで展開して、成長した主人公が割とすんなり奴隷の身分から脱出し、割とすんなりヘンリーと別れ、割とすんなりルドマンさんのところに着きます。マリアさんなどいない。

 

ルドマンさんのところでは尺とかなんやかやの都合で街がブオーンに襲われており、ルドマンさんはブオーンを倒した者に娘と結婚して家督を継がせる権利を与えるおふれを出してます。

なんやかやでルドマンさんのところに行ってフローラと対面する主人公。一目見たフローラから「あなたはリュカさん(ぽっ)」と言われる主人公。

小さい頃に船の中でちょっと会っただけの主人公を覚えてるフローラもすごいけど、それよりそのシーン自体がダイジェストでしか語られてないので「お前誰だよ」感がハンパない。

そんで、なんやかやで主人公はビアンカと酒場で再会して「アンタはリュカ?(ぽっ)」と言われるんだけど、ビアンカとの過去の冒険シーンもダイジェストでしか語られてないので「お前誰だよ」としか思えない。

 

2人して何の思い入れもねえ!

 

結果として主人公は視聴者的にはさほど思い入れがないはずの2人の女性から1人を選ぶことになるんだけど、ここ「ビアンカとフローラから1人を選ぶことがお約束」という前提が共有されてない限り、映画単体だとほとんど成立してないシーンなのがすごいです。

 

その後も情緒もへったくれもなく物語はハイスピードで展開して、いよいよゲマを倒してミルドラースが魔界から現れるか……というシーンで突然画面が止まる。バグか何かが起こったみたいに。

そして唐突に現れる不気味な人物。天元突破グレンラガンのアンチスパイラルさんみたいな、人間の形をしてるけどこの世の理から外れてる感のある人物がいきなり告げるわけです「この世界はお前がプレイしてるゲームの世界なのだ…」

 

やっちゃった感ハンパないぜ!

 

ユア・ストーリーはものすごくハイコンテクストな映画でした。この映画を読み解くのに「ドラクエ5をプレイしている」「ストーリーをある程度知っている」「ビアンカ・フローラ論争がファンを熱狂させた歴史があることを知っている」「ゲームに対する世間のネガティブな視線を知っている」ことが要求されます。

そして、それらを全て理解してるひとの多くはたぶん、この映画をポジティブに評価できないはず。何故なら、「この世界はゲームの世界なのだ」と言った瞬間に、ゲームの世界を楽しみたいって気持ちごと否定されるだろうから。

 

結論として、ユア・ストーリーは近年稀に見る怪作です。この微妙な気持ちを味わうために見たほうがいい。

そして、映画未見でこのエントリーを読んじゃったドラクエファンのみんな。今すぐ記憶を消して映画館に走るんだ!!