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鼻猫亭

毎日のこととかぼんやり考えたことなど

小蝿と闘う

毎日のこと
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 ちょっと油断した隙に、台所に小蝿を集らせてしまった。普通の蝿の10分の1くらいのサイズのやつ。
 食べ物を扱ってるところに蝿が飛んでるというのは何だか不潔だし、だいいち目の前をチラチラ飛ばれるのは鬱陶しい。
 
 そんな折、薬局に行った時にふと、小蝿取りの罠が目に止まったので、これだと思って買ってみた。
 ポット状の容器に、ジェル状の餌が入ってて、おびき寄せるやつ。たぶん餌がネバネバしてて、そこに止まったが最後、動けなくなるって寸法だろう。
 僕は、あの忌まわしい小蝿共を一掃してくれようと、ほくそ笑みながら帰ったものである。
 
 帰宅して早速、箱を開けてポットを取り出す。封を開けた瞬間、何とも言いようのない臭いが漂ってきた。
 
 蜂蜜を何倍にも何倍にも煮詰めて濃縮したような臭い。熟した果物が木から落ちて、土の上でぐずぐずと腐りかけてるような臭い。甘いことには間違いないけど、爽やかさとは程遠い、度を超えた甘さ。過熟の臭いであり、腐敗の臭いである。
 
 ハッキリ言って、人間には不快な臭いである。
 
 「こんなもの置いてたら蝿が集るじゃないか!」
 
 僕は憤りを覚えたが、集って良いのだ。
 
 さて、僕はその異臭を発する物体を台所の隅に置き、小蝿どもを罠にかけ殲滅してくれんと、悪魔のような心持ちで一晩過ごした。
 きっと、一晩待つだけでポットの中にはおびただしい小蝿の山が出来てることであろう。ふふふ、と、期待で胸を膨らませた。
 
 しかしだ。
 一晩待とうが二晩待とうが、一向に小蝿はポットに入ってくれぬ。ポットは依然腐ったフルーツのような臭いを発してるのに、蝿はポットに入ってくれない。
 
 これでは、嗅ぎ損ではないか。
 僕は再び、怒りに身を投じた。
 
 だがその翌朝、ついに絶命した小蝿を見つけたのである。
 
 蝿取りポットの中にではなく、その横に置いていた、子供らの歯列矯正器具の洗浄槽の中に。
 
 仕事をしたのは、強烈な臭いを放つ蝿取り罠ではなく、無臭の洗浄液だった。
 
 「まあ……大騒ぎして引っ掻き回すけど、結局何もしない奴っているよな……。」
 
 僕はそう思いながら、生暖かい目で蝿取りポットを眺めるのだった。
 

 

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