ザワークラウトを作る
夏にイタリアに行って、それはそれは素晴らしい旅だったんだけど、一つだけやり残したことがあって、それは乗り換えで降りたフランクフルト空港でソーセージを食べなかったこと。
ぜんぜんイタリアに関係ないけど、そうなのだ。
なんせ、フランクフルト空港ってば、飛行機をおりて目につくのは加工肉店だし、乗り換えの手荷物検査を通過した先にはでかいソーセージを挟んだパンのスタンドがいくつも並んでて、それはそれはスモーキーな芳香を放っている。
そりゃ、食欲がわかない方がおかしいってもんだという感じだったんだけど、行きは行きで、イタリアに行く前にドイツ料理を食べるのもどうだろう、と思ってしまったし(だいいち、飛行機の中で食事をとったばかりだった)、帰りは帰りで飛行機が遅れて、十分な時間が無くて食べそびれてしまった。ああ俺の馬鹿馬鹿。
そんなわけで、日本に帰国してからしばらく彫りの深いゲルマン人の顔をしたソーセージの霊に憑りつかれ、ひそかにスーパーでちょっと高めのソーセージを買ったりしてたんだけど、こないだスーパーでキャベツ1玉が90円で売ってたわけですね。
ソーセージの霊が私の頭に語りかけてきたね。
「ザワークラウトを作れ」と。
ザワークラウトはキャベツを刻んで酢で煮たものだと思ってる人もいるかも知れないけど、本来のザワークラウトは酢なんか使わない。空気中の乳酸菌で自然に発酵させる。
作り方もかんたん。まずはキャベツを千切りにして、適量の塩を混ぜる。重量の1%から2%くらい。案外少ないかなってくらいでちょうどいいみたい。
塩にまみれたキャベツをキャベツの皮でふたをして、その上に重しを置いて、半日くらい置くとキャベツからじんわりと水がしみだしてくる。
それをさらに数日間、愛情をこめて放置すると(愛情を込めないとカビます)、キャベツから染み出した水が茶色になってきて、キャベツから何やらやる気ありげな濃厚な匂いが漂ってくる。
濃厚な匂いが。
ああ、なんか、これ、嗅いだことある。むかし、農家の軒先にある漬物樽の中を直接嗅いだときとおんなじ匂いだ。
ってか、ドイツ人、よくこれを食べようと思ったよな。
「ちょっと、お母さーん!このキャベツ腐ってるよー!」
「いけるいける〜。ビールで消毒すればいける〜。」
……たぶん、そんな感じ。
ザワークラウトは、玉ねぎと一緒に炒め煮にして、ソーセージに添えたら大変おいしかったです。
酸っぱい中に漂う、ほんのりと漂うなにやら複雑な味と香り。まごうかたなき発酵食品の匂い。酢で煮ただけでは絶対に出てこない、あきらかに違う味。
素晴らしい。
ザワークラウトは、結構簡単にできるので、皆さんもぜひ一度チャレンジすることをお勧めしたい。まあ、うちのこどもらは一口も食べなかったけどね!!