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鼻猫亭

毎日のこととかぼんやり考えたことなど

金太郎は何故中途半端か

だらだら考える
 

 金太郎という昔話があることは、誰もが知ってるんだろうけど、どんなストーリーだったかと聞かれると困る人は意外と多そうだ。

 前掛けをした金太郎が熊と相撲を取るのは覚えてるんだけど…っていう人も少なくないように思う。
 
 これが桃太郎や浦島太郎であれば、たぶん、多くの人がストーリーを最後まで説明できると思う。昔話における「太郎三部作」(いま作った)でありながら、この違いはどこにあるのか。
 簡単だ、金太郎のストーリーは中途半端なのだ。
 
 金太郎のあらすじを説明すると、こうなる。
 
「山奥に母親と二人で暮らす金太郎という若者がいました。金太郎は熊と相撲を取って勝つくらい力持ちでした。ある日、噂を聞いたお侍さんがやってきて、金太郎を都に連れて行きました。金太郎は偉いお侍さんになりました。」
 
 終わり。
 
 思わず、「…で?」と言いたくなる。
 
 率直に言って、この話で辛うじて面白いのは「熊と相撲を取って勝った」ところくらいなもんだ。さっき、「熊と相撲を取るくらいしか覚えてない」と書いたけど、無理はない。だって、熊と相撲を取るのがクライマックスのほぼ全てなのだから。
 
 しかし。ここでよくよく物語の細部を見てみたい。
 実は、金太郎の話の端々からは、壮大な物語の片鱗が垣間見える。本当は、金太郎はもっと長い話になる予定だったんじゃないか。
 
 まず導入の「山奥に母親と二人で暮らす金太郎という若者がいました」というところ。
 金太郎が何故、山奥に母親と二人暮らしなのかについて、伝承の中にはこう伝えるものがある。
 つまり、金太郎はやんごとなき身分の生まれだったが、父親が政敵に追い落とされ、追われることになったため、母親と二人で山奥に隠れ住んでいる、というものだ(異説もあります)。
 「高貴な生まれの者が、卑しい身分に身を奴してる」というのは、まさに物語にありがちな黄金パターンだ。
 
 そして、「熊と相撲を取って勝った」ことからは、主人公が超能力者であることが示唆されている。人ならぬ怪力の持ち主、金太郎。それは「熊」という好敵手と比較することによって、いかんなく描写されている。
 
 つまり、金太郎の本来のストーリーはこうだ。
 抑圧された毎日を送る金太郎、彼には生まれ備わった怪力という超能力があった。熊とのバトルでその力を否応無く見せつける金太郎。そんなある日、彼は都から来たお侍さんから、自らの生まれと宿命を知らされる。どん底からの逆転。ライバルとの競争。成り上がり。やがてくる、父親を死に追いやった宿敵との対決……。
 
 しかし、昔話の金太郎にはそれらの大半は描かれていない。
 
 何故か。
 簡単だ。
 
 不人気で打ち切られたのだ。
 
 本当は、序章にあたる「山奥編」が「お侍さんがやってきて、都に連れて行った」ことで終わり、次に「都編」が始まる予定だった。都でいけすかないライバルと戦う予定だった。かわいいヒロインとボーイミーツガールする予定だった。
しかし、それらは語られることはなく、残酷にも打ち切られたのである。
 
 きっと、序盤の見せ場である、「熊とのバトル」がいまいち盛り上がらなかったのだろう。
 「いまどき相撲てwww」みたいな意見もあったんじゃないかと思う。
 金太郎の「怪力」という能力も、ありきたりでパッとしない。例えばこれが、「全身がゴムで出来ててどこまでも手足が伸びる」って事にしておけば話も広がり、バトルも面白くなったはずだ。
 ついでに金太郎のビジュアルも悪かった。オカッパで前掛けってのはアバンギャルド過ぎた。「ダサかっこいい」を狙ったのだが、「ダサい」ままで打ち切られてしまった。
 
 ラストの「金太郎は偉いお侍さんになりました」というのも、いかにも打ち切りらしい。
 きっと、作者は前の週に突然打ち切りを告げられたのだろう。ページ数がカツカツな中、なんとか「そして10年後…」というところに繋げて体裁を保った形である。
 
 ちなみに、金太郎の連載が続いていればどうなってたか。
 たぶん、都に連れて来られた理由は、都を脅かす謎の外敵「オニ」と戦うためである。そして知る「オニ」の首魁の正体。それはもちろん、政敵に追い落とされ、ニンゲンを憎むようになった金太郎の父親だ。父親とのバトルに涙ながら勝った金太郎だが、息を付く間も無く、大陸から「モウコ」の侵略を受ける。モウコとの死闘で開花する金太郎の第二の能力。勝利。世界政府の立ち上げ。そして宇宙へと。
 
 あーあ。金太郎、打ち切られなかったら名作になってたのにな。