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鼻猫亭

毎日のこととかぼんやり考えたことなど

お土産が売れのこる

 ぼくの職場では、休暇や出張で誰かが買ってきたお土産は、一人一人に配ったりしないで、職場内の休憩スペースの机の上に置いて各人が自由に取ることになっている。
 ぼくはこの方法がとても気に入っている。

 以前の職場は、お土産を買ってきた場合、「休暇を有難うございました」などと言って各人のデスクを周る習わしだったんだけど、一人一人を周るのはやっぱりちょっと煩わしい。
 第一、気を遣う。そして、休み明けの忙しいときなんかは案外面倒だ。
 早く仕事に取り掛かりたいのに「ふーん。休みどこ行ってたの?」という質問で足止めされるのも、正直言ってちょっぴり煩わしい。
 この点、勝手に取る方式は、ただそこに置くだけで良い。付箋にでも「休暇を有難うございました」と書いて貼っておけばきっと満点だ。

 それにこれは内緒なんだけど、勝手に取る方式だと、必ずしも人数に合わせてお土産を買う必要がない。
 デスクを回る方式だと、配れない人が出るのは致命的だ。
 勝手に取る方式だと、お菓子の数が人数に満たなくても目立たない。
 「俺食べてないよ」といわれても、「あれ?誰か二個食べたんじゃないの?」としらばっくれることができる。

 ちなみに、これも内緒なんだけど、ぼくは誰かが買ってきたお土産をこっそり二個食べたことがある。

 そんなわけで、この方式をあらゆる職場に導入したいくらいなんだけど、勝手に取る方式には、ただ一つ残酷な欠点がある。

 職場のみんながお土産を気に入ったのか、気に入ってないのかがあからさまに分かってしまうのだ。

 うっかり的を外したお土産は、誰も口にしないし持ち帰らない。いつまでも放置されたまま、延々と休憩スペースに残ってしまう。これは結構こたえる。
 それじゃ、何となく格好悪いから、こっそりと自分で食べて一つでも減らす。
 ああ、これは外れだな、と自覚する。悲しい。

 ぼくの経験上、一番早く売れたのは、ハワイ土産のホノルル・クッキー・カンパニーのチョコレートクッキーだ。この時はお盆で人が少なかったのに、ほんの二時間で瞬殺された。

 一番売れなかったのは…あまり言いたくない。

 ところで、2週間ほど前に、友達から北海道みやげのジンギスカンキャラメルを貰ったんだけど、どうも自分で食べる気にならなくて、職場の休憩スペースにおいてみた。
 知ってる人は知ってると思うけど、ジンギスカンキャラメルというのは、ジンギスカンのたれの味がするキャラメルだ。それもニンニクやネギの風味まで再現していて、まあ、はっきり言えばまずい。そして、まずいという事に商品価値がある代物だ。

 これが二週間経っても、一向になくならない。

 時々、箱を開けて中身を確認するんだけど、ほとんど減らない。
 いや、よく見ると3粒ばかり無くなっている。2週間で3粒。3粒しか、なんだろうか。それとも、3粒も、なんだろうか。

 それにしても、深夜に誰かが、残業中のやむにやまれぬ飢えのあまり、うっかり口にしたのだろうか。何だか切なくなってきた。