鼻猫亭

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赤福餅について

 大晦日から新年にかけて、伊勢に遊びに行ってたんですが、伊勢のお土産といえば赤福です。

 餅にこしあんが乗ったお菓子と言えばそれまでなんですが、ちょっと懐かし目の紙箱に、餅にのったあんこが波打つように整然と並んだ姿は非常に美しい。昔から変わらない濃い桃色の包装紙や、箱の底のぽってりとした感じも、なにやら愛おしい。


 そんな赤福。やたらと広い販売網を持っていて、京都や大阪あたりでは余裕で売ってたりして、関西のお土産界に燦然と君臨しているわけですが、昨今のお土産事情からすると、ちょっと厄介なところもある。


 まずは消費期限。赤福の消費期限はとても短いです。生菓子である赤福の消費期限は、夏場は2日、冬場は3日。つまり、誰かが出張のお土産で買ってきた場合、夏場であれば次の日には食べきらないといけない。少々消費期限を途過したからってお腹は壊さないにしても、日を置いた赤福はカピカピになってしまって美味しくない。つまり、金曜日の出張のお土産にはできません。

 次に包装。箱の中に並んだ赤福は、付属のへらのようなもので掻き取るようにして取り分けるんだけど、取り分ける最中に必ずと言っていいほど、餡子と餅がバラバラになってしまいます。
 そもそも、職場なんかで取り分ける時に、いちいちへらで掻き取らなきゃいけないこと自体が今やとても不便。個包装してくれたら、サッとみんなに分けられるのに、これは昨今のお土産事情からすればあり得ないレベル。

 多分、これらの問題は、技術的にはすぐに解決できるんだと思います。例えば、一個一個を小分けにして、真空パックにして包装するとか。あるいは、餅と餡子を分けて、食べる時にチューブに入ったあんこを餅に乗せるようにするとか。
 でも、赤福がそれをやっちゃ、いけない気がする。

 言ってみれば、赤福って、本当に何でもないお菓子で、言ってみれば要するにただのあんこ餅でしかない。何のひねりもないし、多分、似たようなものは、そこら中で食べられます。きっと、コンビニにだって売ってる。

 そんな赤福赤福たらしめてるのは、きっと、ぽってりとした紙箱と、濃い桃色の包装紙と、整然と並んだ箱の中身と、それから、へらで取り分けるときのあのひと手間なんじゃないかなあ。

 赤福が、それらを放棄して、個包装に踏み切った瞬間に、赤福は、本当にただの、何の変哲もない「あんこ餅」になってしまうし、きっと、すぐにみんなに飽きられてしまうと思うのです。そして、そのうち、テコ入れ策として、うぐいす餡や、梅肉餡といった味のバリエーションを発売するようになってきて、行きつく先は、たぶん、チョコレートがかかった赤福。きっと、物珍しさで一度は買うけど、絶対にリピートしないチョコレート味。色ものでしかないチョコレート味。

 赤福は、これからもずっと、不便で古めかしくて特別なお土産であって欲しい。
 そして、「この赤福誰が買ってきたんだよ、消費期限今日じゃん!みんな食べてよ!」と何だかんだ文句を言われながら、いつの間にか綺麗になくなってる、そんな存在であり続けて欲しいです。